事務所を こじらせて

FSⅢの所感

 

 

この個展は「清算」だったのだと。

そう知って、安心しました。

 

 

 

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1.【個展の所感】

 

■グリーンヘッドと東京

六本木ヒルズシティビュー森ビル美術館森タワー52階。この会場の醍醐味は、東京をほぼ360度で見回せる展望台にあること。作品の背景が天候や時間帯によって大きく変わることが、他にはない特徴です。

 

だからこそ、今回展示した巨大なグリーンヘッドがよく映えました。「FSⅠの作品と同じように」、東京を背景にしたグリーンヘッドの撮影会に来場者も参加できるなんてファン冥利に尽きます。

 

カメラを縦長にしてカイトを入れたり、映る空の比率を考えたり、象徴である東京タワーを主役にしたり、晴天逆光だったり、濃い雲に包まれて作品を強調させたり、夜だったり夕方だったり真昼だったり。「大野さんと同じことを体験している」と「その日にしか見られなかった景色」のどちらの思い出が詰まった1枚の写真作品が自分のスマホに残すことができました。

 

 

 

■幼き頃の作品群

・2点のテスト

これだけ額装され壁に展示されていましたね。名字と名前の間の空間の取り方が中学生とは思えませんでした。私が先生だったら空間の美が分かる天才と評価して通信簿オール5にしたと思います。また、「大」の3角目の入る位置も絶妙すぎて見どころでした。

 

・ケースの中の作文や賞状、絵画

作文や縄跳び大会の賞状、習字「三」、進撃の巨人の顔みたいな絵、スプーンの模写、マネ「笛を吹く少年」の模写、ドラゴンボール模写等々。書く・描くことが好きなんだと、大野さんを構築した幼い頃のきっかけを見られました。

ケース中央にあった(おそらく)銅板版画のデザインがとても美しかったです。ただインクが入っておらず、銅板のわずかな凹凸目を見るのに今年一番目を凝らしました。現場がないと「この眼球全ての機能を駆使して鮮明に風景を記憶する」なんてしませんから。

そしてもう一つ。それらの作品の下に青い絵具を使用した絵の様な紙ありませんでしたか。背景として配置しているのか、ほんの一部しか見えなくて悶えました。担当の作品は全部見たいと思ってしまうので。このケースはいじらしさが詰め込まれていました。この先、他会場開催とかあった日には絵の配置換えとかやるんでしょうか。やってほしい。

 

 

 

■作業場再現

作業場の壁面のパネルと床の合板をこの会場に移設してきてくれたんですかね。床に広がるオイルのようなシミや飛び散った痕跡を目で追ってしまいました。大量の何かを床にこぼしていた後が見て取れました。何を溢したのでしょうかね。

 

 

 

■24時間TV原画

生原画見られました。思い残すことが減りました。24時間TVTシャツ販売時期にも展示されたことがありましたが、その時は見に行けなかったので。見に行けなかったって思い出もまた、執着のおかげで忘れられないから最高なんですけど、目の前で本物を見るとやっぱり見て良かったという感想です。

原画なだけあって、黒色のみの細い線で描かれていて、その画材のシンプルさも、デザインを強調させていました。今回のFSⅢで書かれた巨大緻密画のきっかけだったのですかね。本人の意思とは反してしまうけれど、大衆受けするデザインが本当に秀逸です。過去最大級の自担贔屓発言ですが、今までで1番のデザインでしたよ。こうなると脳内を過ぎるのは2004年のときの原画。もうないのでしょうか。見れば見るほど、見てない絵も見たくなってしまいます。

 

 

 

■ジャニーさん

でっか〜〜〜い。サイズ100号くらいあるんでしょうか。難産って語ってて、めちゃくちゃ嬉しかったです。同行者が「5億で落札したい」って言ってました。この絵が描かれることになった背景やモデルと作者の関係を知っているからこそ、この絵画には値が付けられない価値がありますよね。あと描くことは残すことでもあるので、単純に羨ましいです。大野さん、この大きさで自画像描いてくれないかなって願っちゃいます。

 

(この記事は個展の最終日に上げようかと思っていたんですが、voyage#16のOHNO’s Diaryの配信後には大きく感情が変わりそうなので、その前に)

 

 

 

■ランタン(1枚目)

個展の中でひとつだけ貰えるとしたらこの絵を選びます。

物体の形は写実的に忠実に捉えている一方で、物質の内面を立体ではなく色を混ぜて描いていて、そこは今回新作のアクリル抽象画の要素も感じました。また中央のガラス部分が限りなく透明に近かったり、それを支える針金の色が赤青で心臓を思わせたり、色の種類が多いし、それだけ考えさせる余地もあって、たくさんの発想を与えられます。

 

そして何より「青色」なことですね。

大野さんのメンバーカラーである青ですが、一概に青と言っても人によってイメージしている青があるじゃないですか。私にとって大野さんの青のイメージは「深海」「夜明け前」あたりなのですが、その対局の「高原の空」って感じだったのでまた違う一面だなとかオタクの極みみたいな感想を抱きました。

あとそれとなくゴッホのタッチも感じました。

 

 

■ランタン(2枚目)

2枚目は比べると実写寄りでしょうか。色の統一感や光源がそう思わせるのかもしれません。塗られた絵具の上に、白色の細い線が走ってました。まるで射した光のようでこれも綺麗でした。いつだかインスタに上げてたランタン3つのうちの1つでしょう。そのランタンに火が入れられたところも見たいなと。

 

 

 

■亀ちゃん

ファンにとってこの亀ちゃんは、フランダースの犬でいうルーベンスの絵なんですよ。

 

これ、最初に見たの盗撮流出の画像でした。大野さんが亀ちゃんに絵を描いた話は聞いていましたが、公開される機会がずっとなくて。初お披露目となったのは2014年のKAT-TUNのファンミ。公開されたと言っても会場は撮影不可。その時に盗撮された流出した写真で絵を知りました。もう見ることはないかななんて思ってたら、先日レギュラー番組でその絵を画面越しに見ることができて、そして今回、個展で本物を見られました。

描かれたのは初期なので、色の重ね方とか、やっぱり今と全然違いますね。

 

もうこれでネロ状態です。

 

 

 

■緻密画(大)

今までの展覧会作品の中で一番胸に来た作品です。生で見ると筆跡が追えます。図録や液晶や繊維じゃ伝わらない、荘厳かつ静謐な印象。「いつまでも見ていられる」ってやつですね。寄りで見れば1つ1つの絵や文字の意味を考えてしまいますが、引きで見た時の線の多さに、この絵と向き合った時間が一目で分かるところも良いですよね。それだけこのキャンバスの前に立ってたんだという、過去の時間が字形となって残る。創作活動のなかで絵を選んでくれて良かったと思います。何よりも残るので。

 

 

 

■新作アクリルシリーズ

ファンのために作品制作していた大野さんが、「(この作品の制作は)気が楽で…」と語った作品群。まさしく「転機」の象徴ですね。

 

今までは筆跡が何らかの物体や文字を作っていたけれど、いよいよそのしがらみを超えてったと解釈しました。この絵は「自由」で、おそらく計画性のない偶然が生み出していて、それを生み出すことは誰もが許されているんです。もちろんそれは作品に限った話ではなくて。本人の姿とリンクしては天を仰ぎ見てしまいます。

 

 

 

□無題

大野さんの作品の大多数はタイトルがないんですよ。無題というキャプションすらない。名前が呼べない。…ヴォルデモート卿?今回の会場の一部にクロネコヤマトの美術便の箱も配置されていましたが、そこに貼られたナンバリングシールを読むと、きたま絵の特徴を捉えた説明が無題の後に記されていて、それを読むのも楽しかったです。

 

 

 

□歴代の肖像画

「どの時代も良いけど、今が最も美しい」って言わされる作品展示でした。

 

 

 

□映像

硬いものを床に落としたような、戸を勢いよくしめたような大きな音が鳴り響いて始まります。6面分割された画面。暗幕で囲われた暗がりのなかピンクの蛍光灯に照らされた白タイツ(記憶が曖昧)に白塗りになった大野さんが無音で踊るという真骨頂作品。踊りとはいえ、床転がったり、ターンしたりとリズムを感じるものではなく、動作と呼ぶに近い。既存の作品で例えるならBAD BOY。

 

比較的「分かりやすい」と評される大野さんですが、こういう時のやっていることは「理解が追いつかなくなる」のがイイんですよね。映像の最後、カメラ側に近づいて来て、勢いよく避けて捌ける演出も意味分からんくて面白かったです。身近にいたらヤバい人をこういう時に見せつけてくる癖(ヘキ)ありますよね。

 

 

 

■最後の部屋

黒の肖像画、今まで見たツラの中で最上級に良かったです。真顔の白も良かったけど。ポスターにもうちわにもならない、あの微笑を浮かべたツラ…あのバカデカサイズの肖像画タペストリーを最後に置いた意味を、意味深歪曲考察するのが今回一番楽しいかもしれません。

口角をわずかに上げた微笑だとか、黒背景に黒シャツでモノクロに仕上げた写真だとか、「陰」の要素しかない。これがファンのためのチョイスなら趣向がバレすぎててウケます。

 

「ありがとう」の文字、あれ、壁に掛けながら描いてるのでしょうか。真ん中あたりで液垂れの跡が見られました。キャンバスを床ではなく壁に掛けて描くのとても好きですよね。

 

美術展って最初と最後に長文の文章が掲示されるけど、作家の手書きの言葉で完結するのも手紙みたいで好きでした。私が台湾で見られずに血涙を流した「謝謝」の悔しさも浮かばれるってものです。

 

 

 

 

 

 

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2.【図録の覚書】

 

〈謝罪/描く意欲がゼロだという話〉

どうしてこうなったって経緯を語るでもなく、ただ謝罪から入るのが辛かったです。謝罪の理由がどこにも書かれてないことも追い討ちでした。知ってることが前提だと明言しているに等しく。そして5年前の出来事がここまで癒えてない大野さんは、想像以上でした。FSⅢではこの件を触れずにいくと思ってたから、まさか本人から話してきて息が止まりました。

だからこそ、休止前の心残りを精算するために再びパグを描こうと決意していることの勇気に震えましたね。

 

5年前、ファンのためについた嘘で生まれた息苦しさが、今、自分のために明らかにした真実によってなくなっていれば、この行為は間違いなく正しかった。良かった良かった。

 

 

 

 

〈休止決定までの過程〉

これ以上頑張れない、って言葉…もう、それ、壊れる人間の言うセリフですよ。どうにかなる前で本当に良かったです。

 

 

〈休止を伝えた時にマサキと翔くんが衝撃的な顔してた話〉

この言い方だと、末ズは衝撃的で無かったのか?なんて変に勘ぐっちゃいました。顔に出ないタイプなだけだろうけど、末ズもいつか来るべき日が来たと思ったところもあったりするんですかね。

 

翔くんが「続けよう」と大野さんに言い出した事実に敬服です。翔くんなのできっと嵐を続けさせつつ大野さんが存続できるレベルの状況を新たに作り出そうとしてたんでしょうね。いやだってさあ、折れる人間に続けようって言う人の方がしんどいでしょう。自分が好きな人間に、辛い地獄を見続けようって言ってるんですから。他者の要望に折れる翔くんの心境想像がつかない。生涯語られなさそうですが、その言葉を口にした翔くんのことは生涯好きでしかないです。

 

 

〈5人でのグッズ会議のあたり〉

インタビュアーに対してああ、うん…の相槌が4センテンス続くのうううって震えちゃいました。

 

 

〈FSⅠの頃は何にも縛られてなかった、今回はあの頃の感覚で絵を描けたいう話〉

唯一、嫉妬した一文でした。

昔は趣味でやっていたことを今仕事にしたとき、昔のような自由さはもう二度と帰ってこないと諦めている人が多いと思うんですよね。諦めた方が楽になるので。でも、大野さんはあの頃に戻ろうと諦めないところ、悔しいくらい妬けました。

 

トップになる夢を叶えた嵐のメンバーですから、絵に関してのその夢もさらりと叶えちゃいそうですよね。多くの人の夢を背負って来た強さを知りました。

 

 

 

 

 

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そして、よくぞここまでの辛苦をファンに開示してくれたとも思いました。これを「辛い」と感じる人もいるだろうけれど、きっと、その先で、その姿の在り方に救われる人がたくさんいるでしょう。

 

この2年間で、これから謳歌するであろう自由時間に見せる楽しそうな表情や姿を、垣間見せてもらいました。

そして休止前に大野さんが個展で伝えたかったことを最後に知ることができました。

こんなに幸せなことはありません。

 

たくさんの人に夢を与えて、たくさんの人に惜しまれる大野さんを好きになれて良かったです。休止でその姿が見えなくなることは死ぬほど寂しいけれど、ここまで好きにならせてくれた大野さんがくれたこの苦しさは、この世で一番美しい感情でした。この頃は胸を締め付けるような寂しさすらとてつもなく幸せで、この感覚を手放したくないとすら思っています。

 

最後に見られたのが現場の本人ではなく、本人の作品だったというのも本当に素敵です。当たり前ですが、嵐の現場には幸せが約束されているんです。現場であれば、大野さんが感じた休止に至るまでの地獄を多分考えなかったと思います。仮に考えたとしても、ここまでの思慮には至らなかったでしょう。

 

担当や推しという概念が気軽に語れるこの時代。始まりはもう偶然と呼べるレベルで勝手にファンになっただけなのに、今や人生でこんなにも感情を与えてくれて感謝しかないです。絵具のように、明暗高低さまざまな感情を得ることができました。こんなにも鮮やかに人生を彩ってくれて、ありがとうございました。

 

幸せになるだろうから言うことでもないかもしれませんが、幸せになってください。

 

 

 

 

 

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【ベストショット】

2020/10/19 Night

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 2020/10/23 Afternoon

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